社章制作ガイド|費用・納期・デザイン・業者選び・再発注まで失敗しない進め方

スーツを着た男性の胸元に社章がつけられており、赤い背景に「失敗しない社章制作 ガイド」という日本語のタイトルが表示されているビジネス向けのアイキャッチ画像

社章の制作は、単なるモノづくりにとどまりません。
多くの場合、企業の理念やブランドを象徴として形に示す取り組みとして位置づけられます。

その成否は、しばしば発注者と制作者のあいだに生じる情報の非対称性を、どの程度縮小できるかによって左右される傾向があります。

社章制作では、費用や納期の見通し、仕様の判断基準、再発注時の条件など、複数の要素が重なり合います。これらをあらかじめ整理しておくことで、社内調整や外部業者とのやり取りが比較的スムーズに進む可能性が高まります。

本記事では、社章制作に関連するプロセスを体系的に整理し、発注から再発注までを俯瞰するための視点を提示します。さらに、よくある失敗を未然に減らす工夫や、業者選定の際に参考となる評価の観点についても紹介します。

本記事でわかること

  • 社章制作における企画・要件定義・デザイン・見積・発注・再発注までの全体的な流れ
  • 費用や納期を考える際の基本的な視点と、社内調整・承認プロセスで配慮すべき点
  • 業者を評価する際に参考となる制度や数値の活用方法
  • デザインや技術仕様で注意が必要とされる点と、失敗を避けるためのチェック項目
  • 一次情報を活用し、価格競争の影響を抑えつつ調達を工夫する方法

ここでご紹介する内容は、一般的な整理や参考事例に基づいたものです。実際の状況や組織の方針によって最適解は異なるため、導入や運用にあたっては、自社の環境や目的に沿った検討や小規模な検証を行いながら活用いただくことをおすすめします。

なお、社章についての全体像については、以下のガイドで網羅的に解説しています。まずはこちらからご覧いただくと、より理解が深まります。
社章とは?意味・マナー・付け方・紛失対応・作成方法までガイド

Homare Hanaのブランド名を中央に配置したシンプルなロゴビジュアル

監修:誉花
表彰・顕彰・徽章文化をはじめ、社章・表彰品・トロフィー・メダル・記念品などの象徴を、ものづくり、文化、マーケティング、学術、ユーザー視点から考えるメディアです。関連領域の実務経験を背景に、複数の立場から情報を整理しています。

目次

社章制作を始める前に整理すべき基本事項


社章制作は、単なる物品調達とは異なり、企業の思想や文化、象徴性を形に反映させる取り組みと位置づけられることがあります。そのプロセスにおいて重要となるのが、企画設計フェーズの精度です。

本章では「社章とは何か」「難易度が高まりやすい理由」「発注前に整理しておくべき情報」という3つの視点から、企画設計を進める際の基本的な考え方を整理します。

社内プロジェクトとしてスムーズな進行と成果物の質を両立させるためには、設計段階で想定される課題を事前に把握しておくことが望ましいといえます。

社章とは企業理念や組織文化を形にする象徴物

社章は、単なるバッジというよりも、企業理念や組織文化を可視化し、職場に一体感や信頼感をもたらす役割を持つとされるものです。象徴性だけでなく、識別機能や顧客への印象形成にも寄与します。

観点社章が果たす主な役割
象徴性企業理念やブランドアイデンティティを形に表す
統一感制服やスーツに一体感を与え、帰属意識を高める
信頼感顧客・取引先に整った印象を与える
識別機能社外業務やイベントで社員を識別できる

配布対象(営業職・本社勤務・新卒社員など)によって、意味づけや活用方法が変化する点も特徴です。そのため企画段階では、「誰に、何のために着用させるのか」を明確化しておくことが重要です。これを言語化することは、社内での説明や合意形成を円滑に進める上で役立ちます。

社章制作は単なる購入ではなく設計型のプロジェクト

一見すると社章は「モノ」の発注のように見えますが、実際には以下のような要素から難易度が高まりやすい特徴を持っています。

  • 非定型品である
    ロゴ・カラー・形状・仕上げが企業ごとに異なり、カスタム設計や見積が都度必要となる。
  • 関係者が多い
    経営層・総務・現場管理職・広報など複数部署が関与し、判断基準も多様である。承認プロセスが整理されていないと手戻りが生じやすい。
  • 目的が曖昧になりやすい
    「前回と同じ」「まずは見積」といった進め方では、象徴性・機能性・利用シーンなど本来の目的が不明確になる場合がある。

このように社章制作は、規格品を購入する購買業務というより、設計型のプロジェクトに近い性質を持ちます。そのため、最初の企画段階が結果を左右する重要なポイントとなります。

社章制作前に確認すべき5つの初期質問

初期段階で以下の5つの観点を整理しておくと、企画全体の進行をスムーズにする助けとなります。

質問カテゴリ質問の内容補足
①目的この社章は、誰に、何を伝えるためのものですか?使用用途(式典/日常着用/新卒配布など)をあらかじめ明確にする
②対象この象徴を身につけるのは、どの範囲の社員ですか?全社員/営業部門/役員限定など、配布対象を定義する
③数量と納期いつまでに、いくつ必要で、再発注は見込まれますか?初回ロット・予備・将来の追加有無まで想定しておく
④デザイン方針ブランドの顔として、どんな表現を想定しますか?ロゴ使用可否・カラー指定・参考デザインの有無などを確認する
⑤決裁者最終的な承認を行うのは誰ですか?社内承認フロー、稟議書の要否、経営判断のタイミングなどを確認する

これらの問いは、単なるチェックリストというよりも、企画担当者がプロジェクト全体を整理しやすくするための枠組みとして機能します。あらかじめ論点を整理することで、社内の意思決定や情報共有を円滑に進める助けとなります。

社章制作の費用は固定費と変動費で決まる


社章の見積書を見て「なぜこの金額になるのか分かりにくい」と感じることは少なくありません。
しかし、費用を固定費と変動費に分けて捉えると、その構造は理解しやすくなります。

この章では、まず「型代」という初期費用の位置づけを確認し、次にロット数と将来的なコスト設計、さらに仕様選定における検討ポイントについて整理します。

型代は初回制作時に発生しやすい固定費

社章制作において「金型代」は、見積金額に大きく影響する要素のひとつです。最初にこの固定費を理解しておくことで、費用構造の把握がしやすくなります。

費用項目費用種別内容
型代固定費金型の製作に必要な費用。一度作成すれば再発注時には通常不要で、初回のみ発生する。
材料費変動費使用する金属材(真鍮/亜鉛/ステンレス等)の単価 × 数量で変動する。
仕上げ加工費変動費メッキ・色入れ・いぶし・樹脂盛りなど、仕様に応じて変動する。

初回見積もりで金額が高く感じられる場合、その一因として「型代」が大きな割合を占めていることがあります。
また、同じ仕様で再発注する場合にはこの費用が発生しないため、2回目以降の単価が下がるケースも見られます。
同じ仕様で再発注する場合にはこの費用が発生しないため、2回目以降の単価が劇的に下がることも珍しくありません。

ロット数によって1個あたりの単価は変わる

社章制作では、製造ロット数と1個あたりの単価は連動しています。これは固定費(特に型代)を製作数量で分割することにより、単価が変化するためです。

ロット数単価傾向説明
10〜29個高単価固定費負担が重く、1個あたりの価格が上がりやすい。
30〜99個標準価格帯中小規模の企業でよく選ばれるゾーン。
100個以上単価低減材料調達や加工効率が高まり、単価が下がる傾向。

必要数量だけで判断すると、結果的に総コストが高くなる場合があります。
たとえば「初回30個+半年後に20個追加」よりも、「初回50個一括」の方が単価が低くなるケースが考えられます。

社章は「毎年採用する新卒への配布」や「役員異動時の支給」など、一定の発生頻度が見込まれる場合があります。そのため、将来の追加発注を見越してロット数を検討することが、コスト設計を行う上で有効といえるでしょう。

材質・メッキ・色入れなどの仕様が費用に影響する

社章の仕様は、費用に大きく影響する意思決定の要素です。すべての要素を高水準で取り入れればコストが上昇するため、「どの要素に重点を置くか」「どこで合理化するか」という観点を持つことが重要です。

以下に、仕様ごとの費用への影響と検討ポイントを整理します。

仕様要素費用影響説明と選定の考え方
材質中〜高真鍮は標準的。ステンレスは強度が高いが価格も上がりやすい。
メッキ金メッキ・ロジウムは高価格帯。ニッケルは比較的コストを抑えやすい。
厚み・サイズ厚みやサイズが大きいほど材料費と加工費が増加する。
色入れエポキシ・七宝などは工程が増えるため単価上昇につながる。
留め具低〜中タイタックが一般的。マグネットやネジ留めはやや高くなる。

利用シーンに応じて仕様を分ける考え方も有効です。
たとえば「取引先と接触の多い営業用には高級仕様を選び、内勤用にはシンプル仕様を採用する」といった分け方は、費用配分を調整する手段のひとつとなります。

費用を抑えるには仕様の優先順位を明確にする

費用を抑えることは必ずしも品質の低下を意味するものではありません。仕様の優先順位を整理し、投資を集中させる部分と合理化できる部分を区別することで、コストを最適化しやすくなります。

ここまでのまとめ

ここまでの内容を整理すると、社章制作においては以下のような視点が得られます。

  • 見積もりの仕組みは「固定費+変動費」で理解できる
  • 仕様の優先順位をつけることで、削減可能な部分と重視すべき部分が明確になる
  • コスト構造を把握することで、見積もり検討や調整がしやすくなる

これらの視点を持つことで、見積書を検討する際により主体的な判断が行いやすくなります。

社章制作の納期は工程ごとに逆算して管理する

社章制作の納期は、事前の準備と設計によって把握・管理することが可能です。特に重要なのは、デザインが入稿されてから納品までには、どれほど条件が整っていても20営業日以上を要するという点です。短縮対応の可否は、工程の性質と社内外の調整状況に大きく左右されます。ここではリードタイムの全体像、短納期を成立させる条件、そして納期トラブルを防ぐ社内承認フローの設計について整理します。

社章制作にはデザイン入稿後20営業日以上を見込む

社章の制作には複数の工程が必要であり、いずれも省略することはできません。そのため、デザイン入稿後20営業日以上を確実に見込んで計画することが必要です。初回発注で金型を作成する場合は、さらに日数を加算する必要があります。

工程標準日数(目安)補足事項
要件定義・デザイン調整3〜7営業日社内決裁や修正対応で変動
金型製作約10営業日初回発注時のみ必要。再発注時は不要
量産・仕上げ・検品約7〜10営業日仕様やロット数によって前後
梱包・納品約2〜3営業日輸送事情で変動あり

この流れを踏まえると、初回発注時は4〜6週間程度を計画するのが妥当です。既存金型を使う再発注でも、3〜4週間程度はかかると見込む必要があります。

短納期で進めるには条件を事前に整える必要がある

20営業日という下限をさらに縮めることは容易ではありません。ただし、以下の条件をすべて満たす場合に限り、一部で短縮対応が検討されることもあります。

  • デザイン・数量・納期が完全に確定している
  • 既存金型を使用できる
  • 工場側で特急生産枠が確保されている
  • 社内承認(稟議・決済)が即時に完了する

これらの条件が揃わない場合は、20営業日未満での対応は現実的ではなく、かえってトラブルや品質低下を招く恐れがあります。

納期遅延を防ぐには社内承認フローの整理が重要

実務では、制作工程そのものよりも社内承認フローの停滞が納期遅延の原因となることが多くあります。特に以下の場面で停滞が起こりやすい傾向があります。

  • デザイン案の確認時に決裁者が不在
  • 初期費用(型代)に関する予算が未確定
  • 稟議書提出が会議スケジュール待ちで停滞

これを防ぐには、承認フローを逆算したスケジューリングが有効です。

タスク停滞要因予防策
デザイン確定決裁者不在初回打合せに決裁者を同席させる
予算確定経理・財務での調整見積に上限案を添えて稟議提出
稟議会議タイミング待ち会議予定を把握し逆算して提出

ここまでのまとめ

デザイン入稿後の納期は最短でも20営業日以上を要します。初回発注は金型製作を含め4〜6週間程度を想定し、再発注でも3〜4週間程度は必要となります。短納期対応は厳格な条件下でのみ成立し、社内承認フローを逆算設計することが納期管理の鍵となります。

社章デザインは理念・視認性・製造性を踏まえて設計する


社章の価値は、見た目の美しさだけでなく、「意図が正しく伝わるかどうか」にあります。

そしてその成否は、納品後ではなく入稿前のデザイン設計
でほぼ決まります。

ロゴがない場合の戦略的な発想法、避けるべきデザイン判断、ブランドカラーの再現性を最大化する指定方法まで。

ここでは、経営メッセージを“形”にするための実践知を惜しみなく公開します。

ロゴがない場合でも理念や社風から社章は設計できる

ロゴが整っていない企業でも、社章デザインは可能です。むしろその機会は、理念や社風を可視化するチャンスにもなります。
主な発想法は以下の通りです:

  • 頭文字×幾何形状:社名のイニシャルを、円・正方形・三角形などで象徴化
  • 理念の視覚化:「成長=右上がり」「協働=歯車」「挑戦=炎・矢印」など
  • 創業の土地や産業モチーフ:地形や産品を抽象化
  • 社是・スローガンの意図抽出:「誠実」→盾型、「革新」→稲妻型など

このように、「社章=ロゴの焼き直し」と考えず、企業の意志を翻訳する設計行為として位置づけると、プロジェクト全体の意義が明確になります。

細かすぎる線や文字は製造時の再現性に注意する

見た目はよくても、製造現場で不具合が出やすい図案があります。下記は特に注意が必要です。

特徴リスク
極端に細い線・小さな文字金型で再現できない/潰れる・かすれる
写真やグラデーションエポキシや七宝では再現不可、印刷でも耐久性に難あり
複雑な重なり・非対称な形状製造時のズレ/バランス不良/変形リスクが高まる
他社と酷似した構図商標トラブル・差別化不能・社内からの不満も

社章は、着用されて初めて意味を持つプロダクトです。

製造と使用に耐える「機能するデザイン」が、信頼性と美しさの両立を可能にします。

ブランドカラーはPANTONEやDICで指定する

ブランド再現性のカギは、「色」と「仕上げ」の指定精度にあります。

とくに下記の要素は、発注者が主導して設計すべきです。

項目指定内容備考
地金色金/ロジウム/ニッケル金:高級感/ロジウム:白く鋭い/ニッケル:廉価・汎用
仕上げ鏡面/梨地/ブラスト視認性、使用環境、指紋汚れの出やすさに影響
色の種類エポキシ樹脂/七宝/印刷エポキシは再現性◎/七宝は伝統・色指定制限あり
色指定方法PANTONE/DIC/現物チップPANTONE/DICで指定すれば、量産時も精度高く安定

とくにエポキシ樹脂+PANTONE or DIC指定の組み合わせは、ブランドイメージを忠実に表現したい企業に最も適しています。
色見本がある場合は、「硬化後の見え方も考慮しながら」調整する必要があります。

再発注・増産の際にも同品質を維持するため、初回の仕様決定は「資産」と捉え、しっかり文書化・記録しておきましょう。

社章の入稿データは製造に適した形式で準備する


社章制作における最終フェーズである「入稿」は、成果物の品質と納期に直結する極めて重要な工程です。

この工程で不備があれば、納品遅延・品質低下・追加費用の発生など、プロジェクト全体に深刻な影響を及ぼします。

入稿データはAIやベクターPDFなどが基本になる

社章制作において、業者に提出すべきデータ形式は、製造工程に適した「パス情報付きデータ」が原則です。

データ形式推奨度備考
.AI(Adobe Illustrator)★★★★☆ベクターデータ。アウトライン化必須。レイヤー構造を明確に整理すること。
.PDF(ベクター保存)★★★☆Illustrator互換のベクターデータであれば可。画像埋め込みPDFは不可。
.SVG★★☆☆☆対応工場は限られるが、ベクター形式であれば一部使用可能。
.JPEG / PNG / BMP☆☆☆☆☆非推奨。ピクセル画像では金型作成不可、解像度不十分。

注意すべきは、テキストのアウトライン化(パス化)と画像リンクの埋め込み確認です。

さらに、ファイル名にバージョン管理(例:ver3_final.ai)を含めることで、社内外の混乱を回避できます。

色指定はPANTONEやDICで行うのが基本

ブランドカラーを正確に再現するためには、感覚ではなく、国際的に標準化されたカラーチップでの指定が不可欠です。

とくに社章は小型製品であるため、微妙な色差が視認性・印象に直結します。

色指定方法特徴使用例
Pantone Solid Coated世界標準。多くの金属加工業者が対応PANTONE 186C(赤系)、287C(青系)など
DICカラーガイド国内で広く使用。和色系の表現も豊富DIC 253(藍)、579(黄)など
CMYK / RGB値デジタル画面上の定義。製造では非対応参考情報として添付可能

色指定のポイントは、「仕上がり後にどのように見えるか」を前提にすることです。
特にメタリック地金の上に塗布する場合、下地の反射光で色味が変化します。

そのため、指定色と実際の仕上がりのギャップを想定した調整を行うと安心です。

最小線幅・文字サイズ・色境界には物理的な限界がある

社章は非常に小さなプロダクトであり、デザインの再現には物理的な制約が伴います。以下は一般的な目安であり、実際の限界値は依頼先の会社や工場によって異なる点に注意が必要です。

項目目安備考
最小線幅0.2mm〜0.3mmこれ以下は再現が難しく潰れる可能性がある。工場によって基準が変わる
最小文字サイズ(英数字)約4pt(≒1.4mm)ゴシック体が推奨。明朝体や筆記体は再現性が下がりやすい
凹凸再現可能な深さ約0.1〜0.2mm程度高低差が小さい立体は平滑化されやすい
色境界の最小間隔0.3mm以上推奨隣接する色が混ざったり、境界が曖昧になる可能性がある

こうした制約は、完成品の可読性や美観に直接影響します。デザインを検討する際はデジタル上での見た目ではなく、直径15mm前後の実寸サイズで再現できるかどうかを意識することが大切です。

ここまでのまとめ

  • 物理的な再現限界はあくまで目安であり、工場によって条件は異なる
  • ベクターデータ形式で入稿することで、製造現場での修正リスクを抑えられる
  • 色指定や境界の取り方は、再現性を踏まえた指示を出すことで安定性が増す
  • 制約を理解した設計と修正の判断は、納期・品質・コストの安定につながる

次章では「信頼できる制作パートナーをどう見抜くか」という視点から、業者選定の基準と実務的なチェックリストを整理します。

社章制作の業者選びでは品質管理と再発注体制を確認する

価格や営業担当者の言葉だけでは業者の実力を判断することは難しいため、制度設計や品質管理の記録を確認することが有効です。社章制作は専門性が高く情報の非対称性も存在するため、数値や仕組みを基準に評価することが求められます。

品質保証の仕組みや検査記録を確認する

品質の安定性は、制度化された検査体制や記録の有無によって左右されます。以下の観点を確認することで、口頭説明にとどまらない実務的な信頼性を把握することができます。

評価項目確認すべき内容
不良率の記録「過去6ヶ月平均:〇%」など、具体的な数値で提示されているか
検査頻度全数検査か、抜取検査の場合はサンプリング率が明確か
検査工程のルールチェック基準や第三者照合の仕組みがあるか
記録保持の有無ロット別や日別で検査記録が保管されているか

こうした制度と記録の有無が、安定供給と品質保証の基盤となります。

データや金型の保管体制を確認する

社章は一度作って終わりではなく、再発注や増産が発生する可能性があります。そのため設計データや金型を資産として適切に管理しているかを確認することが重要です。

  • 入稿データの形式・履歴・担当情報が整理されているか
  • 金型の保管年限、再使用可否、破棄ルールが明文化されているか
  • データや仕様書が依頼元にも共有され、再利用できる仕組みになっているか

これらが整っていない場合、再発注時に初回と同じコストや納期が必要になることがあります。

再発注時の最小ロットや色味の再現性を確認する

再発注における対応力は業者の体制を測るうえで有効な指標です。以下の点を確認すると良いでしょう。

  • 再発注時の最小ロット数が明示されているか
  • 過去ロットとの照合など、色味の再現性が制度化されているか
  • ロゴや社名変更時の再設計対応や価格体系が事前に定義されているか

「柔軟に対応します」といった表現だけではなく、実際に制度化されているかどうかを確認することが重要です。

価格だけでなく発信内容や経営姿勢も判断材料にする

数値や制度に加え、業者の発信や経営姿勢も評価の対象になります。特に以下の点は参考になります。

  • WEBサイトや資料などで情報を定期的に公開しているか
  • ヒアリング時に企業文化やブランド価値への理解があるか
  • 社章を単なるバッジではなく経営資産と捉えているか

こうした観点を総合的に確認することで、長期的に信頼できる業者かどうかを判断する助けとなります。

ここまでのまとめ

  • 品質保証は検査体制や記録の有無で確認する
  • データや金型の管理体制は再発注時の安定性に直結する
  • 再発注の制度や対応力が長期的な信頼を判断する基準になる
  • 発信内容や経営姿勢も、現代的な事業者かどうかを見極める手がかりとなる

次章では、こうした判断の根拠を踏まえ、実務で使える業者選定のチェックリストをご紹介します。

社章制作に関するよくある質問


ここでは、これまでの章で触れきれなかった実務的な疑問について、Q&A形式で補足いたします。

特に初めて社章制作に関わる方にとっての判断ポイントを整理しております。

社章は10個や20個などの小ロットでも制作できる?

A:一般に対応する業者もありますが、最低ロットや単価は各社で異なります。オリジナル社章を小ロットで製作できる事例もありますが、単価は割高になる傾向があります。将来の追加や紛失リスクを踏まえると、30個以上を推奨する事例が多いとされています。

社章の実物サンプルは事前に確認できる?

A:はい、可能です(※有償が一般的です)。
重要仕様ではサンプル校正を検討すると効果的です。完成品の色味や質感を事前に確認でき、量産後のトラブル防止に有効ですが、費用やリードタイムが発生します。

既存の社章デザインを少しだけ変更できる?

A:基本的には“新規製作”扱いとなります。
「ロゴの微調整」や「文字の追加」などわずかな変更でも、金型は新規で作り直しとなる場合がほとんどです。
したがって、初期費用(型代)は再度発生すると見込んでおくべきです。

社章の寿命やメッキ剥がれの目安は?

A使用環境と仕様により幅がありますが、一般的な金属製社章では5〜10年程度の事例が報告されています。安価なメッキ仕様では1〜2年で変色や剥がれが生じる可能性もあります。

社章制作の支払いタイミングはいつ?

A:一般的には以下の2パターンが多いです。
・発注確定時に半金、納品後に残金支払い
・納品後、翌月末までに一括支払い
特に初回取引では前金を求められる場合があります。社内の経理ルールと照らし合わせ、見積もり段階で確認しておくのが安全です。

社員が社章を紛失した場合に1個だけ追加できる?

A社員が紛失し、1個だけ追加製作を依頼する場合でも、一部の工程では量産と同等の手間が必要となるため、高額になるケースがあります。

社章制作に関する一次情報を公開する意義

本ガイドでは、社章制作に関する実務知見や一次情報を公開しています。その背景には、業界における情報不足という構造的課題と、発注者が適切に判断できる環境を整えることの重要性があります。

実務経験に基づく知見は発注判断の参考になる

過去には、BtoB取引に関連するサービスに携わり、営業活動やデザイン校正、発注者との調整といった現場業務を直接担当した経験があります。そうした経験を通じて得られた知見は、単なる制作工程の情報にとどまらず、意思決定のプロセスや発注者が直面する課題を理解するための参考となります。

この情報は、特定の事例に依存するものではなく、構造的な整理や透明性を重視した形で提示することを目的としています。

社章業界の情報不足は発注者の判断を難しくする

社章業界は、他の分野と比べて外部に公開されている情報が少ないという特徴があります。発注者が必要とする基礎情報や比較基準が十分に整備されていない場合、意思決定に不安を伴うことがあります。

そのため、実務経験から得られた情報や手順を体系的に公開することで、発注者が自ら判断する力を持ち、より円滑にプロジェクトを進められるようになることが期待されます。

情報開示は取引前の信頼構築につながる

従来は、取引を重ねることで信頼を得るケースが多く見られましたが、現在では取引前から情報提供を通じて信頼を築くことが重視されつつあります。透明性のある情報開示は、事前の不安を軽減し、合理的な判断を可能にする手段となります。

ここまでのまとめ

  • 本ガイドは、社章制作に関する実務知見を整理して公開している
  • 情報の非対称性を補うことで、発注者の判断を支援することを目的としている
  • 取引開始前から透明性を確保することが、現代的な信頼構築の一つの形といえる

本ガイドが、読者の社章プロジェクトを計画・推進するうえでの参考となれば幸いです。

商標・製品名称に関する表記について


PANTONE® は Pantone LLC の登録商標です。当サイトは Pantone LLC との提携・承認を受けているものではありません。
DICおよびDICカラーガイドは DIC株式会社の製品名称です。当サイトは DIC株式会社との提携・承認を受けているものではありません。
本文中で言及した各ブランド名・製品名は、それぞれの権利者に帰属します。

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