
社会人として働いていると、「やる気が続かない」「以前ほどやりがいを感じられない」と感じる瞬間は誰にでもあります。評価の不透明さや人間関係の摩擦、仕事量や環境の変化など、さまざまな要因が重なると、自分の努力や価値が見えにくくなってしまうものです。私自身もそうした時期を何度も経験し、働く意味や自分の立ち位置を深く考えざるを得ませんでした。
けれども、転職や職場環境の変化を経てわかったのは、「やる気」や「やりがい」は、外側の環境や評価ももちろん大切ですが、それだけで完結するものではないということです。むしろ、自分の内側から工夫して再構築することも同じくらい重要だと感じました。心理学や組織行動論の研究を手がかりに、自分の性格・強み・価値観を理解し、それを仕事や職場環境に結びつけることで、少しずつ働く手応えが戻ってきたのです。
本記事では、私自身の経験をベースに、やる気ややりがいを「自分で再設計する」ための実践的な方法を紹介します。内容は、学術的な理論を背景にしつつも、今日から試せる具体的なステップに整理しています。
この記事でわかることは以下のとおりです。
- 自分の性格・強み・価値観を科学的に理解する方法
- 職場とのミスマッチを見直すチェックポイント
- 仕事を自分仕様に整える「ジョブ・クラフティング」の実践法
- やる気・やりがいを長期的に維持するための習慣
やる気を取り戻すことは、自己再生の過程でもあります。焦らずに、自分の内面と環境を丁寧に見つめ直すことで、エンゲージメントは必ず再び育っていく可能性が高まります。本記事がその最初の一歩との参考となれば幸いです。
本記事は筆者の経験と文献に基づく一般的情報であり、医療・法務・労務の助言を目的とするものではありません。個別の判断が必要な場合は、専門家へご相談ください。

監修・執筆:誉花
誉花は、「{しるし × ものづくり} × {アカデミック × マーケティング}=価値あるしるし」をコンセプトに活動しています。社章やトロフィー、表彰制度が持つ本質的な価値を科学的かつ実務的な視点から探求・整理し、再現性の可能性がある知見として発信しています。私たちは、現場での経験と調査・理論を掛け合わせ、人と組織の中に眠る「誉れ」が花開くための情報を提供しています。
目次
組織におけるエンゲージメント低下の構造
長期にわたり理不尽さや不均衡が続く環境では、誰しもやる気や自尊心が損なわれやすくなります。しかし同時に、その経験は「自分を守るための構造的理解」と「再生の戦略」を考える契機にもなり得ます。感情的な反応ではなく、なぜ動機ややりがいが失われたのかを構造的に整理することが、エンゲージメント回復の第一歩となります。
評価の歪みと燃え尽きの始まり
努力や成果に対して、正当な評価や報酬が得られない状態が続くと、モチベーションは徐々に低下していきます。
特に、成果が可視化されにくい業務やチーム体制では、個人の貢献が正しく伝わらず、報われない感覚が蓄積しやすい構造があります。
- 成果が定量的に測れない
- 評価者が現場を理解していない
- 成果の因果関係が曖昧
- 組織内の功績配分が不透明
こうした歪みが続くと、燃え尽きや無力感が進行し、エンゲージメント低下の連鎖が始まります。
組織文化がやる気を削ぐ構造
組織文化そのものが、意欲を抑制する方向に働くこともあります。誠実に働く人が孤立し、責任回避が許容される文化が形成されると、健全な基準が崩れていきます。
- 同調圧力が強く、合理的な意見が通りにくい
- 公正さよりも人間関係が優先される
- 誠実な行動が評価されにくい
- 不正や怠慢が見逃される
このような環境では、「正しく行動するより、波風を立てない方が得」という心理が生まれ、組織全体の活力が失われます。
声を上げづらい構造的圧力
上層部や権限者に対して率直な意見を述べにくい環境は、組織の閉塞感を強めます。形式上はオープンな風土でも、実際には反論や提案が抑圧されている場合があります。
こうした状況では、建設的な改善提案が表面化せず、現場の問題が慢性化していきます。
身体的・心理的な消耗
心理的安全性が欠如した状態が続くと、精神的な疲弊が進行します。
圧力的な言動や過剰な責任負担が常態化すると、働くこと自体が「我慢」と同義になり、心身の消耗を伴います。結果として、仕事への関心や挑戦意欲が低下しやすくなります。
構造的サインの認識と再構築への転換
モチベーションの低下、自己効力感の喪失、発言の抑制といった現象は、個人の問題ではなく、構造的な問題のサインである場合が多いです。
次のような問いを通して、自分の置かれている構造を見直すことが再構築の第一歩になります。
- 自分に適した業種・役割か?
- 現在の環境に問題はないか?
- 成果と評価が連動しているか?
- 心理的安全性は確保されているか?
エンゲージメント再構築の方向性
これらの気づきを起点に、自らできる再構築を模索することが重要です。
たとえば以下のような取り組みが有効です。
- 自己理解(性格・強み・価値観の整理)
- 環境診断(組織文化・評価制度の分析)
- ジョブ・クラフティング(仕事の意味づけ・再設計)
これらを通じて、自分と仕事、そして組織との関係性を再定義することで、より健全で持続可能な働き方を見出すことができます。
エンゲージメント=やる気・やりがいの定義と私の立ち位置
エンゲージメントという言葉は、「やる気」や「やりがい」と混同されることが多いように思います。ですが、実際にはそれらを含みながらも、もう少し広い意味を持つ言葉だと感じています。単なる気分や満足度ではなく、「仕事に対して心理的にどれだけ没頭し、価値を見出せているか」を示すものと考えています。ここで一度、言葉の整理をしておきたいと思います。
やる気・やりがい・エンゲージメントの違い
| 概念 | 定義 | 主な焦点 | 継続性 |
|---|---|---|---|
| やる気(Motivation) | 行動を起こす一時的なエネルギー。外的要因(報酬・刺激)によって変化しやすい。 | 外発的要素(報酬・評価) | 短期的 |
| やりがい(Meaning / Purpose) | 行動や成果に意味や価値を感じる感情。達成・貢献・承認と結びつく。 | 内発的要素(意味・貢献) | 中期的 |
| エンゲージメント(Engagement) | やる気とやりがいの両方を土台に、仕事や組織への心理的な没入とエネルギーの持続が生まれている状態。 | 組織・仕事・自己の統合感 | 長期的 |
私が採用した“個人起点”アプローチの概要
やる気ややりがいを取り戻すためには、組織や上司の対応を待つだけでなく、自分自身の構造を理解し、環境と照らし合わせながら工夫することが大切だと感じています。私自身が試行錯誤のなかで取り入れてきたのは、次のような流れです。
- 自己理解: 性格・強み・価値観を可視化し、自分がどんなときに動機づけられるかを整理する。
- 環境診断: 職場の文化や人間関係、評価の仕組みなどを分析し、自分に合うかどうかを確認する。
- ジョブ・クラフティング: 自分の裁量の範囲で、仕事のやり方・関係性・意味づけを見直す。
- 維持管理: 定期的に自己点検を行い、「自分×環境」のバランスを保つ。
組織や制度は、多くの人に向けて設計された平均値的な仕組みです。そのため、どうしても個人の価値観や強みとのズレが生じやすくなります。このズレを放置すると、努力しても報われない感覚や、空回りするような感覚が積み重なってしまうことがあります。
また、自分を知ることだけでは、エンゲージメントは長く続かないとも感じました。
環境そのものが合わない場合は、どれだけ工夫しても限界があります。
合わない場所に長くいすぎると、徐々に判断力や感受性が鈍ってしまうこともあるように思います。
ときには、離れる・捨てるという選択も、自分を守る大切な戦略のひとつだと感じました。
これは逃げではなく、長い目で見たときに、自分の誠実さと健全さを保つための選択だと思います。
このように、自己理解と環境選択の両方を並行して考えることで、エンゲージメントは少しずつ安定していくように思います。
次章では、この考え方を実際の職場にどう当てはめていくかを、「環境を見極める――やりがい搾取を防ぐ職場分析術」として整理していきます。
まずは自分を知る——私が実践した科学的セルフ診断
私にとって、やる気ややりがいを再び取り戻すきっかけは、自分を科学的に理解し直すことでした。
どれほど努力しても成果や満足感が得られなかった時期に、まず取り組んだのが「自己診断」です。性格・強み・価値観を客観的に把握し、自分がどんな環境や仕事に合うのかを明確にすることで、少しずつ行動の軸が定まりました。
先天的性格の把握(ビッグファイブ)
ビッグファイブは、人の性格を「開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向」の5つの因子で測定する心理学モデルです。私自身、このテストを通じて「なぜ自分が特定の状況で疲れやすいのか」「どんな環境でパフォーマンスが出やすいのか」を数値として理解できました。
- 目的: 自分の行動傾向を客観的に可視化し、職場でのストレス要因を特定するため。
- 読み方: 得点が高い・低いという結果を「良い・悪い」ではなく、「エネルギーの向かう方向」として理解する。
- 得た示唆: 私の場合、好奇心と誠実性が高く、神経症傾向もやや高い結果でした。そのため「好奇心が原動力になっている」という自覚が生まれました。
この結果から、私は「好奇心を満たせる業種の方が働き方のほうが合っている」と気づきました。
職場で過剰に責任を抱え込みやすい人ほど、自分の性格特性を理解し、仕事量や関係性のバランスを意識的に設計することが必要だと感じました。
強みの明確化(ストレングスファインダー)
次に取り組んだのが、ギャラップ社のストレングスファインダーです。これは「自分が自然と発揮している思考・感情・行動のパターン」を34項目から特定するテストで、自分の強みを“再現可能な資質”として言語化できるのが特徴です。
- 目的: 「得意なこと」と「評価されること」のズレを整理し、自分の成果の源泉を知るため。
- 結果からの気づき: 私は「戦略性」「内省」「活発」などが上位にありました。
- 仕事での活用: 大きなプロジェクトの構築の0から、全体像を企画立案しバランスととりながら単独で独走してスケールさせるエンジンになる活用をしています。
一方で、評価制度が「数字重視・即効性重視」型の会社では、このような強みが見えにくいこともありました。
私はそのギャップを埋めるために、成果を“見える化”して共有する工夫を行いました。具体的には、議事録・提案資料・改善報告などに「自分がどの要素を整理したのか」を明文化することで、貢献の可視性を高めました。
このプロセスが、自分の強みを他者が認識できる形に翻訳する大切さを教えてくれました。
価値観の定期点検(『INSIGHT』フレーム活用)
最後に取り入れたのが、タシャ・ユーリック氏の著書『INSIGHT』の自己洞察フレームです。
これは「自分を知る」だけでなく、「他者からどう見られているか」を含めて理解するための実践的なツールです。私はこれを半年ごとに“価値観の棚卸し”を行う仕組みとして活用しています。
- 頻度: 半年〜1年に一度、自分の行動・判断・発言を振り返る。
- 質問例:
- 最近、どんなときに充実感を感じたか。
- どんな場面で不快感や違和感を覚えたか。
- それは、自分のどの価値観と結びついているか。
- 実務手順: ノートに3つの価値観(例:成長)を挙げ、それぞれを10点満点で自己採点し、点が低かった理由を文章化する。
この作業を続けていくと、「今の職場が自分の価値観とどれくらい一致しているか」が見えてきます。
私はある時期、「誠実さ」と「効率」の間で葛藤していることに気づきました。組織が短期成果を優先する一方で、自分は長期的信頼を重視していたのです。
このズレが、やる気ややりがいを下げる要因になっていたのだと思います。
価値観の点検は、エンゲージメントを保つための最も静かで効果的なメンテナンスだと感じています。
自分が向いている業種につけているかを確認する
やる気ややりがいが続かない原因は、必ずしも「職場環境」や「人間関係」だけとは限りません。
ときには、自分の性格・価値観と業種そのものの性質が合っていないことが根本にある場合もあります。
この章では、私が実践した「業種マッチング」の考え方と、判断のための整理法を紹介します。
業種の“性格”を知る——どんな人がその業界で力を発揮しやすいか
- 業界ごとに求められる気質や思考特性が異なる。
- たとえば、製造業は「安定・正確性」志向、広告・クリエイティブ業界は「変化・表現」志向。
- 金融・法務・会計分野はリスク管理と制度順守を重視し、スタートアップは柔軟性とスピードを重んじる傾向。
- 自分の特性(例:内省型/外向型、慎重/即断、計画/直感)と、業界の価値観を照らし合わせてみる。
私の場合、分析や戦略構築を得意とするタイプである一方、組織が「感覚重視・勢い型」だったため、思考と文化が噛み合わず、判断の精度よりスピードが評価されることにストレスを感じていました。
この経験から、「合う・合わない」は能力ではなく価値観の相性」であると理解しました。
性格特性と業種傾向のマッピング
| 自分の傾向 | 向いている業種傾向 | 向いていない業種傾向 | コメント |
|---|---|---|---|
| 慎重で計画的 | 製造業・品質管理・経理・研究職 | 広告・営業・ベンチャー型事業 | 「再現性の高い仕事」で力を発揮しやすい |
| 外向的で行動力が高い | 営業・広報・スタートアップ | 研究・分析職 | 「人の反応で成果が見える」環境が合いやすい |
| 共感力が高く調整型 | 人事・カスタマーサクセス・教育 | 数値・ルール中心の職種 | 関係性を通じて貢献を感じやすい |
| 探究心・戦略性が強い | コンサル・企画・マーケティング | ルーチン業務 | 「考え抜く余白」がある業界に適性 |
| 安定志向・堅実型 | 公務・インフラ・金融 | 変化の激しい新興企業 | 長期的視点で成果を積み上げる環境が合う |
この表は、「どの業界が良いか」ではなく、「自分がエネルギーを消耗しにくい環境はどこか」を見つけるための参考です。
マッチ度が低い場合は、同じ業種内でも職種の変更や役割の再設計で適合できることもあります。
職業と価値観の“ねじれ”を確認する質問リスト
- 今の仕事で「自分の大切にしていること」が活かされていると感じるか。
- 毎日の業務に「学び」や「成長の実感」があるか。
- 仕事を通じて「誰かに貢献している」と実感できているか。
- 「この業界にいる理由」を言葉にしたとき、納得感があるか。
- 自分の強みが“評価される軸”に含まれているか。
この問いに半分以上「いいえ」と答える場合、業界そのものの文化や価値観と自分の方向性にズレがある可能性があります。
私自身、当初は「自分の努力が足りない」と考えていましたが、実際には「戦う土俵そのものが合っていなかった」ということに後から気づきました。
判断の指針——業界を離れるか、関わり方を変えるか
- 同じ業種でも、会社や職種を変えることで活躍できるケースがある。
- どうしても価値観の乖離が大きい場合は、“離れる勇気”も戦略のひとつ。
- 逆に、業界を離れずに「自分なりの関わり方」を再設計する道もある。
補足:
私は最終的に、「業界から離れる」のではなく、「業界との関わり方を変える」選択をしました。
外から支援・分析する立場に変わることで、同じ分野でも健全な距離感を保ちながら働けるようになりました。
業界を変えること=敗北ではなく、適性の再定義だと感じています。
職場を診断する――やりがい搾取・不公平を見抜くチェック法
どれほど自己理解を深めても、職場そのものの構造が歪んでいれば、努力は報われにくくなります。
私はこの段階で、「自分が変わる」よりも先に「環境を見極める」必要があると気づきました。
環境診断は、転職か適応かを判断するための重要な基準になります。
ここでは、私自身が実際に行ったチェック法を整理します。
評価制度と不公平性の見分け方
評価制度の不透明さや不公平感は、エンゲージメントを大きく損なう要因になります。
私はこれを「制度の欠陥」ではなく、「運用の透明性の欠如」として見るようにしています。
評価基準を確認するポイント
- 評価軸が明文化されているか: 評価表や人事制度に、行動・成果・プロセスのどれを重視するか明記されているか。
- フィードバックの頻度: 半年〜年1回の面談のみか、それとも定期的に中間フィードバックがあるか。
- 成果の可視化プロセス: チーム成果に個人貢献がどう反映されるかが明確か。
- 決定プロセスの開示: 誰が評価を決定しているのか、その判断材料が共有されているか。
- 昇進・報酬との連動: 評価結果がどの程度、具体的な待遇変化につながっているか。
私自身の経験では、上司が自らの手柄として私の成果を報告していたケースが2回ありました。
そのとき気づいた兆候は、「部下を仕事にハマらせればいい」「安給与でもやってくれる」「ロジックさえ手に入れればこっちのもの」という意図がありそうだと感じる発言と行動がありました。
こうした小さな違和感は、不公平の前兆であることが多いと感じます。評価制度を疑う前に、まずは「情報の流れ」を可視化してみることが、実態を見抜く第一歩になります。見抜いたとしても解決することが、難しい場合も多くあると思います。
上司・同僚との関係性評価
人間関係の質は、評価制度以上にエンゲージメントを左右します。職場の「心理的安全性」が低下していると、人は挑戦や発言を控えるようになります。
関係性を見極めるための質問リスト
- 会議中に意見を出しやすい雰囲気があるか。
- ミスや課題を共有しても、責められず建設的に扱われているか。
- 上司は自分の話を最後まで聞こうとする姿勢があるか。
- 同僚間で助け合いやフォローが自然に行われているか。
- 成果や失敗についての話題が、「個人攻撃」ではなく「プロセス改善」として扱われているか。
私の経験では、関係が崩れ始めた初期段階で、「冗談の名を借りた皮肉」や「会話の遮断」といったサインが見られました。この段階で取った対応は、「相手の意図を確かめる短い対話」でした。それでも改善しない場合は、“修復できるか・距離を置くか”を見極める基準として、次の2点を意識しました。
- 相手が対話に応じる意思を示すか。
- 改善行動が2週間以内に見える形で現れるか。
これを超えても変化がない場合、私は「環境そのものを変える」方向を検討しました。
職務・業界・文化の「マッチング度」簡易診断表
自分の性格や価値観を理解したうえで、職場がそれにどの程度合っているかを客観的に見直すことが重要です。
下の表は、私が作成して使っていた簡易スコア表です。
| 自分の特性(例) | 職場の特徴(例) | マッチ度の見立て | コメント |
|---|---|---|---|
| 内省的・分析型 | スピード重視・即断即決 | ★☆☆☆☆ | 深く考える前に結論が出る文化で疲労感が強い |
| 誠実・計画型 | 曖昧な指示・変化が多い | ★★☆☆☆ | 状況対応に追われ、仕事の質を保ちづらい |
| 共感力が高い | 競争的・個人主義的 | ★☆☆☆☆ | 情報共有が少なく孤立感が強まる |
| 戦略志向・構造派 | 現場主義・感覚判断型 | ★★★☆☆ | 論理的整理を活かせる場を自ら作る必要あり |
| 学習欲が強い | 安定志向・前例踏襲型 | ★☆☆☆☆ | 成長機会が乏しく、長期的に停滞リスクが高い |
この診断の目的は「良い・悪い」を決めることではなく、自分が“呼吸しやすい場所”を見極めることにあります。
マッチ度が低い場合は、次のような順でアクションを検討しました。
- 改善: 上司や同僚に具体的な提案をして改善余地を探る。
- 交渉: 役割変更・担当調整などの選択肢を相談する。
- 移動: 社内異動や部署変更を試みる。
- 離脱: 構造的に変わらない場合は、転職を現実的に視野に入れる。
環境診断は、自分を守るための冷静な「健康チェック」のようなものだと感じています。
問題の本質が「自分」なのか「職場構造」なのかを見極めることで、次に踏み出す方向がはっきりしていきます。
ジョブ・クラフティングで“やりがい”を再構築する実務手順
どんな職場であっても、一定の制約のなかで自分の手で仕事を作り直すことは可能だと感じました。
私自身、環境を急に変えることができなかった時期に、仕事の構成・関係・意味づけを少しずつ見直していくことで、やりがいの感覚が戻ってきました。
この章では、その具体的な方法を紹介します。
タスク・クラフティング(業務の再配列)―私の実践例
日々の業務を「量」ではなく「構成」として捉え直し、自分の集中リズムや思考特性に合う順序へ再配列することから始めました。
同じ仕事でも、時間帯や順序を少し変えるだけで、エネルギーの消耗度が大きく変わることに気づきました。
小さく始める3ステップ
- 現状の棚卸し: 1週間分の業務をリスト化し、「思考系(企画・分析)」と「作業系(処理・調整)」に分類する。
- 再配列: 集中が高い時間帯に思考系の仕事を置き、午後に作業系業務をまとめて配置する。
- 提案・共有: 新しい進め方を上司やチームに共有し、「全体効率の向上」として提案する。
上司への提案テンプレート(言い回し例)
- 「朝の時間帯に企画や調査を進め、午後に作業を集約することで全体の精度が上がりそうです。一度試してみてもよいでしょうか。」
- 「自分の集中の波を整理してみたところ、この配置が最も成果を出せそうでした。チームでも検証してみたいと思います。」
私が最初に実践したのは、「朝に調査や企画などの知的労働を行い、午後から作業・夕方も作業に充てる」というリズムでした。
午前中の高い集中力を企画に使い、午後は淡々と作業を進めることで、心身の負荷が減り、成果も安定しました。
ジョブ・クラフティングは、大きな改革ではなく、日常の小さな調整を積み重ねることで自分に合った働き方を形づくる方法だと感じています。
リレーショナル・クラフティング(関係の再定義)―私の対処法
仕事の質を左右するのは、タスク以上に人との関係であると痛感しました。
そこで私は、すべての関係を維持するのではなく、「自分にとって建設的な関係を優先的に再設計する」ことを意識しました。
コミュニケーションの原則・境界設定
- すべての人と「仲良くする」ことを目標にせず、「目的に応じて関係を設計する」と捉える。
- 自分の時間と集中を守るため、即時返信や即反応を求められても、あえて一呼吸置く。
- 批判的・攻撃的な相手には、必要最小限の事実確認のみに留める。
- 安心して話せる人を数名見つけ、そこにエネルギーを集中させる。
私は、かつて関係が悪化した職場で、強い緊張感を抱えながら働いていました。
その後、「信頼を再構築できる人」だけに絞って対話を重ねるようにしました。
具体的には、「以前のことで誤解があったかもしれません。今後はこういう形で連携していきたい」と、感情ではなく目的を伝える形を取りました。
すべてを修復しようとせず、“信頼できる最小単位”を再構築することが、自分を守りながら働くための現実的な方法だと感じています。
コグニティブ・クラフティング(仕事の意味づけ)―思考の書き換え術
最後に行ったのは、「この仕事の意味をどう捉えるか」という視点の書き換えでした。
同じ仕事でも、見る角度を変えるだけで、自分の感じ方ややりがいの質が変わることがあります。
意味づけの具体ワーク
- この仕事がうまくいったとき、誰が喜ぶだろうか。
- 失敗から得た学びは何か。
- 今の業務のどの部分が、自分の価値観とつながっているか。
- 数字ではなく「貢献」として捉えたとき、何が見えてくるか。
私は、成果が見えにくい仕事を「報われない作業」と考えることが多くありました。
しかし視点を変え、「誰かの支えになる準備」だと思うようにしただけで、モチベーションが少しずつ安定しました。
小さな成功や感謝の言葉を受け取ったときは、その瞬間の状況と感情をメモに残すようにしています。
後から見返すと、「自分が何に価値を感じる人間なのか」が明確になります。
やりがいとは外から与えられるものではなく、自分が意味を見出した瞬間の積み重ねだと感じています。
自己点検ルーチン(頻度・テンプレート)
やる気を保つうえで私の経験では効果的でしたのは、「感情」や「出来事」を定期的に棚卸しするルーチンを持つことでした。
これは自己管理というより、自分の心の動きを“可視化”して調整する習慣です。
週次・月次・半年チェック項目
- 週次:
- 今週、楽しかった業務は何か。
- 疲労や違和感を感じた場面はどこか。
- 来週に少しでも改善できそうなことはあるか。
- 月次:
- 成果と成長の実感があったか。
- 自分の強みを活かせた場面はあったか。
- 周囲との関係で気づいた課題や変化はあったか。
- 半年:
- 今の仕事に誇りや意味を感じているか。
- 1年前と比べて、やりがいや学びの方向性は変化しているか。
- これから半年、何を増やし、何を減らしたいか。
私は、これらを「1行メモ」として週末に書き出すようにしています。
たとえば「今週は会話の質が下がった」「資料作成がスムーズだった」など、小さな気づきでも構いません。
その記録を月ごとに振り返り、傾向を見つけることで、自分の状態変化がデータとして見えてきます。
また、スマートフォンのメモやスプレッドシートなど、手間がかからず続けられるツールを使うと継続しやすいです。
完璧に記録することよりも、「振り返る習慣を維持すること」が大切だと思います。
FAQ
Q1.「やる気」「やりがい」「エンゲージメント」はどう違うのでしょうか?
A.やる気は短期的な意欲、やりがいは中期的な充実感、エンゲージメントはそれらが安定的に続いている状態を指すと考えられます。
一時的な感情ではなく、日々の仕事に納得を感じながら関わり続けられる状態とも言えるかもしれません。
Q2.自分に合った職場や業界を見極めるにはどうすればよいですか?
A.まずは、自分の性格や強み、価値観を整理してみることが役立ちます。
それを、業界や会社の特徴(スピード重視・安定志向・チーム文化など)と照らし合わせることで、相性の傾向が見えてくる場合があります。
「自分の得意な働き方が評価されやすいか」という視点で見直すのも一つの方法です。
Q3.ジョブ・クラフティングとは何をすることなのでしょうか?
A.ジョブ・クラフティングとは、今ある仕事を自分の特性や価値観に合わせて少しずつ調整していく考え方です。
タスク・クラフティング: 仕事の順序や配分を自分の集中リズムに合わせて見直す。
リレーショナル・クラフティング: 人との関係性を整理し、信頼できるつながりを大切にする。
コグニティブ・クラフティング: 仕事の意味づけを変え、目的を再確認する。
小さな変化の積み重ねが、働く手応えの回復につながることもあります。
Q4.やる気を保つためにどんな習慣が効果的でしょうか?
A.週ごとや月ごとに、自分の感情や出来事を振り返る時間を持つことが役立つ場合があります。
1行メモや簡単な記録を続けるだけでも、疲れや充実の傾向が見えやすくなります。
自分を責めるよりも、「今どんな状態にあるか」を静かに確認することが大切だと感じます。
Q5.転職や環境を変える判断は、どのように考えればよいですか?
A.感情だけで決めず、少し時間を置いて整理することがすすめられます。
不満が一時的なものか、構造的なものかを区別するために、
不調の時期や原因を記録してみる
小さな改善を試してみる
それでも変化がない期間が続くかどうかを確認する
といった段階を踏むと判断が穏やかになります。
自分の心身がどのくらい回復できているかも、ひとつの指標になるかもしれません。
まとめ――やる気とやりがいを“設計できる自分”になる
長い間、私は「やる気」や「やりがい」は環境や上司次第だと思っていました。
けれども、振り返ってみると、それらは“与えられるもの”ではなく、自分の理解と選択の積み重ねで形づくられていくものだと感じています。
この文章でたどってきた流れは、次のように整理できます。
- 自己理解を深める:
性格・強み・価値観を科学的に把握することで、何が自分の動力源なのかを明確にする。 - 環境を見極める:
評価制度・人間関係・文化の構造を分析し、「自分が変わるべきか」「環境を変えるべきか」を判断する。 - 仕事を再設計する:
ジョブ・クラフティングによって、タスク・関係・意味づけを小さく調整しながら、やりがいを再構築する。 - 持続させる仕組みを持つ:
自己点検ルーチンと外部フィードバックを組み込み、定期的に心の状態をメンテナンスする。
これらを実践して感じたのは、「働く意味」は一度見つけて終わるものではない、ということです。
自分の中の価値観も、職場も、時間とともに変わっていきます。
だからこそ、“設計し続ける力”こそが、真のエンゲージメントなのだと思います。
無理に前向きになろうとせず、焦らずに、自分のペースで環境と向き合うこと。
やりがいとは、誰かに評価される瞬間ではなく、「自分が納得できる働き方を見つけた瞬間」に静かに芽生えるものです。その瞬間を少しずつ増やしていくことが、やる気を長く保つ一番確かな方法だと感じています。
参考文献
ジョブ・クラフティング(Job Crafting)
Wrzesniewski, A., & Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of Management Review, 26(2), 179–201.
https://doi.org/10.5465/amr.2001.4378011
ストレングスファインダー(StrengthsFinder)
Rath, T. (2007). StrengthsFinder 2.0. Gallup Press.
公式ページ: https://store.gallup.com/product/strengthsfinder-20/01tPa00000QhU0kIAF
ビッグファイブ理論(Big Five Theory)
McCrae, R. R., & Costa, P. T. Jr. (1999). A five-factor theory of personality. In L. A. Pervin & O. P. John (Eds.), Handbook of Personality: Theory and Research (2nd ed., pp. 139–153). Guilford Press.
参考版(ResearchGate掲載PDF): https://www.researchgate.net/publication/284978581_A_five-factor_theory_of_personality
タシャ(ターシャ)・ユーリック『INSIGHT』」
Eurich, T. (2018). Insight: The Surprising Truth About How Others See Us, How We See Ourselves, and Why the Answers Matter More Than We Think. Crown Currency(Paperback). ISBN: 9780525573944. 公式出版社ページ:https://www.penguinrandomhouse.com/books/545088/insight-by-tasha-eurich/ PenguinRandomhouse.com
Official site for the book(著者公式):https://www.insight-book.com/ Insight | Tasha Eurich
ターシャ・ユーリック(著)中竹竜二(監訳)樋口武志(訳)(2019)『insight――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』英治出版.ISBN: 9784862762702.版元ページ:https://eijipress.co.jp/products/2270 英治出版
著者公式サイト(Books配下のINSIGHT導線あり):https://www.tashaeurich.com/